広域科学専攻

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専攻長挨拶

専攻長 松田 恭幸

松田 恭幸

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻は、総合文化研究科の自然科学系すべての教員が所属する、東京大学の中でも規模が大きく、またカバーする分野の幅が広い大学院組織です。多くの大学院では「物理学専攻」や「生命科学専攻」のように既存の学問分野ごとに専攻を置くことが多いですが、広域科学専攻ではこのような形をとらず、数理科学、物理学、情報科学、宇宙科学、地球科学、化学、生命科学、スポーツ科学、心理学、認知科学、人文地理学、科学技術政策学、科学哲学など幅広い分野で最先端の研究を行う教員が一つの専攻のもとで研究活動を行っています。広域科学専攻の大学院生は、生命環境科学系、広域システム科学系、相関基礎科学系、国際環境学プログラムのいずれかに属し、それぞれの系・プログラムにおいて研究活動を通して自身の専門分野における知見と研究手法を身につけていきますが、それと同時に、系を超えて自身が関心をもった分野の講義等も履修することができます。さらに、大学院の副専攻プログラムである科学技術インタープリター養成プログラムでは、ある分野における研究者や専門家が、社会の中で他の立場にある人たちと、どのように/どのようなコミュニケーションをとるべきなのか、ということを学ぶことができます。こうした専攻のありかたは、高い専門性を持ちながら様々な分野を横断する視野をも持ち、同時に、自身の研究活動を通じて培われた問題設定・解決能力を人類が抱える様々な課題解決のために用いることができる人材を育成しようという、広域科学専攻の方針の表れです。

広域科学専攻では、大学院生をサポートするための様々な取り組みを行っています。当専攻が主幹部局として運営している先端基礎科学推進国際卓越大学院プログラムでは博士号取得を目指す優秀な大学院生に修士1年次から金銭的サポートを行います。他にもリサーチ・アシスタント制度を用いた研究支援や、オン・キャンパス・ジョブ制度、ティーチング・アシスタント等のプログラムを通して教育活動の補助にあたりながらサポートを受ける仕組みも用意されています。国際的発信力を持つ若手研究者を育成するために、海外における学会発表等への参加を支援するための「博士・修士課程学生のための国際研究集会渡航助成」を行うとともに、今年度からは副指導教員制度を設け、大学院生が直接指導を受ける指導教員とは異なる教員からも、研究や生活における助言をうけることができる環境を整えました。これらの取り組みも、広域科学専攻が目指す人材育成の方針に沿ったものです。

広域科学専攻は、総合文化研究科の専攻の一つとして 1985年に発足し、その後、大学院重点化による改組・拡充を経て、1995年に三つの系からなる体制に移行し、その後、英語のみで修士・博士の学位取得が可能な教育プログラムである「国際環境学プログラム」が併設されて現在の体制となりました。この間に 2914名の修士課程修了者、1110名の博士課程修了者を輩出し(2023年3月現在)、修了生は国内外の学術界・産業界等、幅広い分野において活躍しています。広域科学専攻は、これからも高い研究成果を生み出すとともに、高度な専門知を現代社会が直面する様々な問題の解決に用いることができる人材を育成し、社会に貢献していきます。関係する皆様には、ご理解、ご指導いただけますよう、よろしくお願いいたします。

そして、広域科学専攻へ進学を希望する皆さん、皆さんはその特性に応じて3つの系と国際環境プログラムに分かれて行われる試験を経て入学することになります。入試においては、これまでに学んできた知識やスキルをもとに、志望する研究活動に携わる能力と意欲が問われることになりますが、私たちは、これまで学んできたことの延長ではなく、異なる分野へ挑戦しようとする意欲的な志願者にも広く門戸を開いています。広域科学専攻の優れた研究・教育環境のもとで、ぜひ、皆さんと一緒に新しい知を切り開いていきたいと思います。